こじらせ社長のお気に入り
もう一度、忘れてくれって念を押されるのだろうかって思ったら、胸がズキズキと痛み出した。
もう隠しきれない。こんなにも胸を痛めている理由は、私が社長のことを好きになってしまったからだ。

そう認めてしまえば、社長の目を見るのが怖くなってくる。

「笹川ちゃん、顔を上げてくれる?」

「い、嫌です」

「どうして?」

「……こ、怖いから……」

「怖い?なにを怖がってるの?」

「そ、それは……」

社長は、私が話し出すのを静かに待っている。
このなんとも言えない雰囲気に、息が詰まりそうになる。

「それは……社長にまた、なかったことにしてって、忘れてって言われることが……」

「笹川ちゃん、それって……」

こんなの、私も好きだって言ったのも同然だ。
下を向いたまま、ぎゅっと目を閉じていたら、体がふんわりと包まれて、硬直してしまう。

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