こじらせ社長のお気に入り
「しゃ、社長!?」

社長に抱きしめられてるんだって気付いて、焦ってしまう。

「笹川ちゃん、可愛い」

「や、やめてください」

私は真剣に話したのに、いつもと同じ〝可愛い〟って……
人のことを根掘り葉掘り聞き出しておいて、それはあんまりじゃないだろうか……

「違うよ、笹川ちゃん。って、ごめん。普段の俺の言動のせいだな。でも、今全身で俺に好意を示してくれた笹川ちゃんが、愛しくて、可愛くて仕方がない」

「えっ……」

そっと目を開けた。顔を上げる勇気はないけれど、社長の言葉に少しずつ体から力が抜けていくのを感じる。

「笹川ちゃん、俺……忘れてくれとか勝手なことを言ったけど、やっぱり無理だ」

抱きしめていた腕を解くと、私と向かい合わせになって、そっと顎に手を添えた。そのまま優しく持ち上げると、私と目を合わせてくる。それがたまらなく恥ずかしいのに、そらすことはできそうにない。


「笹川ちゃん。好きだ」


社長の瞳の中に、大きく目を見開いた自分のが見える。
社長が私のことを好き?それは、今度こそ本当なの?


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