こじらせ社長のお気に入り
「あんなふうに自分勝手に告白して、返事を聞かないまま君を遠ざけたんだ。信じられないって言われても仕方がないかな」

切なげな社長の瞳から目が離せなくなる。
〝好きだ〟と言われても、すぐには実感が湧いてこない。もっと社長の言葉を、心を聞かせて欲しいと願ってしまう。

そんな私の気持ちを察したのか、そっと私をソファーに促すと、すぐ隣に社長も座って話し始めた。

「俺のせいで、笹川ちゃんが仕事に集中できなくなってしまったことが、たまらなく嫌だったんだ。前に、〝誰にでもできる仕事〟なんて言われて、心底傷付いた顔をしていたから。
笹川ちゃんは、プライドを持って全力で取り組んでいるのに。
きっと、あのミスも笹川ちゃんは自分を責めて、自分に幻滅してしまうのかと思ったら、俺の想いを押しつけられなかった」

そんなふうに思っているなんて、想像もしてなかった。あれは単なる気まぐれなんだって、からかわれてるんだって思っていたから。

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