こじらせ社長のお気に入り
お互いの存在を確かめるかのように、しっかり抱きしめ合った。その温もりが、私を安心させてくれる。


しばらくしてそっと体を離すと、それが自然の流れであるかのように、何度も口付けを交わした。

「はぁ……」

自分でも信じられないぐらい甘いため息が漏れる。
もっと近付きたい。もっと触れたい。
初めて抱くそんな感情に、自分自身が戸惑ってしまう。

「そんな熱い目で見つめられたら、帰せなくなってしまう」

「えっ?」

一体どんな顔をしていたというのだろう。急に恥ずかしさが増してきて俯いた。

「柚月のことは、本当に大事にしたいんだ。たぶん、これが俺にとって最後の恋になるから」

それって……

「柚月が今思っているので正解かな。一生って言っただろ?
でも、もう少し待って。ちゃんとしたタイミングで申し込むから」

プロポーズ……ってことだよね?
急な展開に、頭はついてこないのに、なにか胸がいっぱいになる。

なにも言葉にできなくて、ただコクリと首を縦に振れば、再び強く抱きしめられた。





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