こじらせ社長のお気に入り
「そろそろ送ってく」

しばらくして立ち上がった社長に合わせて、私も立ち上がる。

「あっ、社長。後片付け……」

そう言いかけると、ジロリと睨まれた。
こ、怖いんですけど……

「社長……ないな。ないない。柚月が仕事一筋なのは、十分すぎるほど理解している。けれど、仕事を離れたらちゃんと名前で呼んで欲しい」

な、名前……まあ、当然といえば当然だ。だけど、まだまだ始まったばかり。社長という意識も大きいわけで……一体なんと呼べと?

「希望があるんだけど……」

希望……
自分で呼び方を考えるより、希望を出してもらった方がはるかに都合が良い気がする。

私が頷くと、社長は照れくさそうに話し出した。


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