こじらせ社長のお気に入り
ーそれから数日後ー


「颯太君。そんなにカリカリしないで。いい?私からちゃんと話すから、必要なタイミングがくるまで、大人しく控えていて」

もともとフランクな人だったから、私の口調が砕けるのも早かった。

「わかってるって」

金曜日の定時後。
お洒落なカフェで横並びに座って、待ち合わせ相手が来るまでに、再度颯太君に釘を刺しておく。



「お待たせ」

ハッと顔を上げると、呼び出した相手である有原勇斗が立っていた。
私の横に座る颯太君の姿を見ると、眉を潜めた。

「はあ……やっぱりそういうことか」

そう小さく呟いて、向かい側に座った。

「ご、ごめんね、疲れているところを呼び出して」

「いや、いいよ。柚月の呼び出しなら、いつでも、どこでも駆けつける気でいたから」

勇斗の若干挑発するような言葉に、ぐっと拳に力を入れる颯太君。テーブルの下で、その拳をぽんぽんと叩いて、感情の昂ぶりを諫める。


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