こじらせ社長のお気に入り
「陽菜ちゃん、どうかした?」

「えっ?ああ。山城さんが幸せそうだなあと思って」

「へっ?俺?」

その割には、私を凝視していたような……

自分を指差す颯太君に、陽菜ちゃんはうんうんと頷く。

「それにね、チャラさがなくなった」

「会うたびに、陽菜に〝可愛い〟を連呼していたけど、今日は一度も言ってないな」

陽菜ちゃんの横で、要さんが颯太君をジロリと睨みながら言う。

「良いお相手を、やっと見つけましたからね」

そこへ、副社長がさらりと口を挟む。

「わかる?最愛の人を捕まえちゃってさあ」

颯太君はそう言いながら、ガシッと私の肩を抱き寄せた。

「ねえ、柚月」

ここが人前だとか、そういうことはやっぱりこの人には関係ないようだ。こめかみをピクピクさせながら固まっていると、陽菜ちゃんが真面目な表情のまま言う。

< 217 / 223 >

この作品をシェア

pagetop