こじらせ社長のお気に入り
「友人として、遠慮なく思ったことを言うから、心して聞いてね」

「う、うん」

真顔でそんなふうに切り出すから、思わず背筋を伸ばす。
背中がゾクリとするのは、秋が深まって肌寒くなってきたせいだけじゃないと思う。
普段と違う真理の様子に、緊張感が増してくる。

「柚月はさあ、事なかれ主義?波風を立てたくない?って言えば上品で穏やかそうに聞こえるけれど、要するに、〝自分〟っていうものがないのよ。周りに流されやす過ぎる。3人の彼氏とだってさあ、言われるままになんとなく付き合って、なんとなく別れて……だったんじゃないの?」

「……言い返す言葉もございませぬ……」

「別れよって言われて、泣いたり追い縋ったりしたこともないんじゃない?」

「その通りです……ね」

「傷心で、ご飯が喉を通らないことも、全くなかったはず」

「……」

「さらに言えば、相手に詳しい理由を聞いたことも、聞きたいと思ったこともないんじゃない?」

本日何度目か……真理の言う全てが図星過ぎて、何も言えない……
なんか、他人に指摘されると、私って嫌なやつじゃんと思えて、気分が沈んでくる。

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