こじらせ社長のお気に入り
SIDE 颯太
「おい、山城。出られそうか?」
仕事が終わった途端、この男の口調は副社長としてのそれから、親友としてのものに完全に変わる。まあ、就業中でも、ちょいちょい毒を吐かれているが……
「ああ。もう行ける」
帰り支度をしながら、少し前まで笹川ちゃんがいた席を見る。
今夜はダメ出しの嵐なんだろうなあ……と、心の中でため息をつく。
駅からすぐという立地条件の良さもあって、普段から電車通勤をしている俺は、連行されるまま、瑞樹の車に乗り込んだ。
こいつの車が大きめなのは、家族が増えたからではない。あっ、いや。ある意味家族が増えたのか。義弟から譲り受けたという、愛犬カイのためだ。
「葵ちゃん。体調はどう?迷惑じゃないか?」
「おかげさまで、つわりもなく順調だし、むしろ、お前が来ない方が迷惑だ」
「というと?」
「お前のいく末を心配して、いつも嘆いている」
「はあ……」
「それを本人にぶつけて発散させてやらないと、ストレスで逆に体調を崩しかねない」
「そ、そうですか……」
仕事が終わった途端、この男の口調は副社長としてのそれから、親友としてのものに完全に変わる。まあ、就業中でも、ちょいちょい毒を吐かれているが……
「ああ。もう行ける」
帰り支度をしながら、少し前まで笹川ちゃんがいた席を見る。
今夜はダメ出しの嵐なんだろうなあ……と、心の中でため息をつく。
駅からすぐという立地条件の良さもあって、普段から電車通勤をしている俺は、連行されるまま、瑞樹の車に乗り込んだ。
こいつの車が大きめなのは、家族が増えたからではない。あっ、いや。ある意味家族が増えたのか。義弟から譲り受けたという、愛犬カイのためだ。
「葵ちゃん。体調はどう?迷惑じゃないか?」
「おかげさまで、つわりもなく順調だし、むしろ、お前が来ない方が迷惑だ」
「というと?」
「お前のいく末を心配して、いつも嘆いている」
「はあ……」
「それを本人にぶつけて発散させてやらないと、ストレスで逆に体調を崩しかねない」
「そ、そうですか……」