必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 さらに、子供そのものも転がっている。一歳になるかならないか、そのくらいの男の子がふたり。床に仰向けに転がって、手足をバタバタと全身をめいいっぱい使って暴れている。泣きわめき過ぎたのか、ふたりとも顔を真っ赤にしている。

 ふたりが泣いている理由はすぐにわかった。きっとヤキモチだ。

 転がるふたりの真ん中に、大きな男が立っていた。アルもすらりとした長身だが、彼よりもさらに頭ふたつ分くらいは大きそうだ。その彼の肩にもたれるようにして、もうひとり、男の子が幸せそうな顔ですやすやと寝息をたてていた。

 きっと泣いているふたりは、ひとりだけ抱っこされている彼に、ヤキモチをやいているのだろう。

 突然あらわれたエイミに、大男は怪訝な眼差しを向ける。

「なんだ、お前は……」

 地獄の底から響いてくるような、ドスのきいた声だった。

(ひいっ! こ、怖い!!)

 怖いのは声だけではない。大男はエイミの村に度々降りてきては、村人を脅かしていた野性の狼にそっくりだった。
 長い銀髪にあちこち傷だらけの身体。右頬には大きな切り傷があった。

 青灰色の瞳が、じろりとエイミを睨みつける。よくよく見れば、顔立ちそのものは整っているのだが……恐ろしげな目つきがすべてを台無しにしてしまっている。
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