必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「ねぇ、エイミ。これとあっちなら、どっちがいいかしら?」

 リーズは顔合わせに着ていくドレスを選んでいる最中だ。

 紺色の少し大人びたドレスと、スミレ色の優しい雰囲気のものとで、悩んでいるようだ。
 どちらも品が良く、リーズによく似合いそうだ。エイミがそう伝えると、リーズはますます悩みはじめた。

「うーん。背伸びしているって思われるのは嫌だけど、年相応のものを着たら、やっぱり子供っぽいし……いっそのこと赤や黒にしてみようかなー」

 リーズはドレスを次々と引っ張り出してきては、何度も着替えをしている。

 後から出してきたものより、最初に迷っていたニ着の方がずっと素敵だ。エイミはそう思ったが、黙ってリーズを見守っていた。
 
 ここ数日、リーズはとても張り切っていた。服や靴はもちろんのこと、バーティ男爵の息子のことも色々と調べて、当日なにを話そうかと作戦を練っている。

 嬉しくて舞い上がっているようにも見えるのだが……エイミはうーんと唸った。

(というより、無理してはしゃいでる?)

 本当は縁談なんて嫌なのだろうか。だとしたら、ジークにそれを伝えるべきか。いや、それこそ余計なお世話ってやつだろうか。

(こんなとき、本当のお母さんなら、リーズの気持ちを分かってあげられたのかなぁ)

 リーズの気持ちに寄り添ってあげたいのに、肝心の本心がわからない。エイミは自分の力不足を実感して、しゅんと肩を落した。
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