必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「あの、新しく女中になったエイミと申します。えっと……ご挨拶は後できちんとしますので、とりあえずふたりを抱っこしてもいいですか?」

 大男も怖いが、泣きわめいて呼吸困難になりかけているふたりの男の子が気がかりだ。エイミは大男の返事を待たずに、素早くふたりを抱きかかえた。

 両手にぴったり同じ重さ。左右のバランスが取りやすい。

「わぁ。体重が同じくらいだから、ふたり抱っこもしやすいわ」

 エイミはふたりを見比べながら微笑んだ。抱っこに安心したのか、ふたりの大泣きは止んだ。とはいえ、まだメソメソ、グズグズはしているが。

「ほーら、グルグルだよ~」

 言いながら、エイミは自身がくるくると回ってみせる。右手にかかえていた男の子がキャッキャッと楽しそうな声をあげる。けど、左の男の子はまだグスグスと涙を流していた。

「うーん。君はなかなか手強いね。じゃあ今度は反対回りだ~」

 エイミはさっきよりスピードをあげて、反対側に回り出す。

「お、おいっ。危なくないか? 落ちたら大変だっ」

 大男が慌てたようにエイミに駆け寄ってくる。

「大丈夫ですよ~。ほら、こうして肘から先を全部使って、腰から背中を支えてるんです。あとは自分の腰をストッパーにしておけば、完璧です!」

 エイミは大男に子供の楽ちんな抱き方を伝授する。エイミが見る限り、彼は子守り初心者のようだった。抱っこの仕方が、どこかぎこちない。

「ほぅ……そんなものか」
 
 彼は感心したように頷いた。
< 12 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop