必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「それにしても、そんなゴボウみたいにガリガリな腕でふたりも抱えては大変だろう?」
「全然大丈夫ですよ! 妹のアイリーンは泣き虫だったから、六歳になるまでずっと抱っこしてましたし。こんな小さな子なら、ひとりやふたりや三人……あっ、三人は言い過ぎでした。三人ならおんぶ紐が必要です」
「見かけによらず、逞しいな」
「はい!農作業は体力と腕力が命ですから」

 エイミが言うと、大男はふっと少しだけ口元を緩めた。柔らかな表情をすると、彼本来の端整な顔立ちが際立って、なかなかかっこよい。

 たたずまいはものすごく怖いが、悪い人ではなさそうだとエイミは思った。

 それに、よく見れば彼はなんだか弱っているようだった。
 顔は青白いし、目の下には大きなくまができている。心なしか、頬もこけているような気がする。

「あの、もしかしたら具合が悪いんじゃないですか? 顔色が良くないですよ」
「いや、具合は悪くない。俺はすこぶる健康だ」
「そ、そうですか。なら、いいんですが」

 そのとき、大男が「くあぁ」とあくびをかみ殺したのを、エイミは見逃さなかった。

「あっ! わかりました。夜泣きで寝不足なんですね? そういえば昨夜も泣き声が聞こえてましたし」
「いや、大丈夫だ。戦の最中など、何日も眠れないことなどよくあることで……」
「そういう非常時と一緒にしちゃダメですよ! 子供のいる生活は日常なんですから。はい、私が三人を見ておくので少し寝てください」

 エイミは自分が抱っこしていたふたりをおろすと、とりあえずおもちゃを与えておく。そして、大男の抱っこしている子を奪うようにして抱き上げた。
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