必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 翌朝。 
 エイミは寝不足の目をこすりながら、堤防工事に出かけるジークと領民達を見送るはめになった。

 結局、ゾーイの思いこみによる暴走だったことがあっさりと判明し、エイミとジークの夫婦関係はこれまで通り維持されることになったのだが……。

「エ、エイミ」

 ぶすっと口をへの字に結んでいるエイミに、ゾーイは声をかけた。だが、エイミは答えない。ゾーイは焦った。

「わ、悪かったよ。ごめんなさい! けど、俺の気持ちもわかってくれよ。好きだった女が急にいなくなってて、探しにきてみたら知らない男と結婚とかしてて……それに、俺、エイミも俺のこと好きなのかと」

 エイミはギロリとゾーイを睨む。

「わっ、ごめんなさい。なんでもないです」

 別に殴ったりする気はないのに、なぜか頭を庇っているゾーイを見て、エイミはふっと表情を緩めた。 

「もういいよ。ゾーイの気持ちは全然知らなかったし、私は全然好きじゃなかったけど……」

 すべてを全否定され、ゾーイはがくりと肩を落した。
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