必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「けど、私なんかを思ってくれてる人がいたなんて知らなかった。それ自体ははすごく嬉しい」

 村にいた頃の自分は、自信がなくて、いつも俯いてばかりいた気がする。あの頃の自分に教えてあげたいくらいだ。

「だから、ありがとう、ゾーイ。堤防工事、しっかり頑張ってきてね」

 エイミは笑って、ゾーイを送り出した。ゾーイはちょっと涙目になりながら、「おう」と元気よく答えた。

 エイミは最後にジークの元へ向かった。
 ジークはもう馬に跨がっていたが、エイミに気がつくとすぐに降りて駆けつけてきてくれた。

「私、怒ってますからね」

 エイミはぷぅと、頬を膨らませた。

「すまない。許してくれるまで、何度でも謝る」

 ジークは心底済まなそうに、頭を下げた。

「こんなにもジーク様を大好きな気持ちが、ちっとも伝わってなかったなんて悲しすぎます」
「う、いや、その……」

 オロオロとうろたえることしかできないジークが無性にかわいく見える、エイミはくすりと笑って、言った。

「だから、早く帰ってきてくださいね! 帰ってきたら、私のジーク様への気持ち、飽きるまで聞いてもらいますから」

 エイミのその言葉に、ジークはほっとして頬を緩める。

「うん、すぐに戻る」
「はい、待っています!」

 ジークは少し迷う素振りを見せてから、エイミの頬にそっと唇を寄せた。そしてささやく。

「……エイミは怒った顔もとびきり可愛いな」
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