必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 小さな親切大きなお世話だったヒースの機転のおかげで、ふたりの王都観光デートはお預けとなってしまったのだ。

 ピンクのベッドに横たわるエイミの隣に、ジークは腰をおろしている。ふたりの手はしっかりとつながれていた。

「ごめんなさい! せっかく王都まで遊びに来たのに」
「いや、そんなことは気にするな。ゆっくり休めよ」
「でも……ジーク様、すごく残念そう」

 上目遣いに見上げてくるエイミから、ジークは焦ったように目をそらした。

「そんなことないぞ。王都観光なんて、いつでもできるからな!」

 そう、王都観光は全然残念なんかではない。そもそもジークにとっては、珍しくもなんともない街。エイミが喜ぶ顔が見たかっただけだ。

 ジークにとって残念なことは、観光よりもふたりきりの夜がお預けになったことなのだが……それはエイミにはとても言えない、ジークはそう思った。「でも……ふたりきりで、お部屋デートも悪くないですね。私、とっても幸せです!」

 エイミはそう言って、ジークの手にすりすりと頬を寄せた。

 まだ酔いが覚めていないのだろうか。それとも、これは俺の忍耐力を試そうとしているのだろうか? 

 ジークは馬鹿げた疑心暗鬼におちいりながら、ややひきつった笑顔をエイミに返した。






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