必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
10章 ハットオル家の一大事
 ぐっすりと眠りこむエイミの横でジークが眠れぬ夜を過ごしていた、ちょうどそのころ、二人の留守中のノービルド城をひとりの老爺が訪ねてきた。

「客? 約束もなしに、こんな時間にか?」

 お風呂上がりだったアルは、リーズの呼びかけに裸のまま応じた。

「きゃっ! 服くらい着てから出てきてよ。アルの変態!」

 リーズは顔を真っ赤にして、すごいスピートでくるりと回ってアルに背を向けた。

(……こいつ、こんなにかわいかったか?)

 最近やけにリーズがかわいく見える。アルは軽く目をこすってみたが、耳まで赤くしている小さな背中はどうしようもないほど愛おしかった。

 アルは衝動のままに彼女の背中を抱きしめた。

「こんなことで照れてたら、いつまでも大人になれないだろ」
「照れてないわよ! マナーとか恥じらいとか、そういう問題です」

 憎まれ口も、ちっとも憎らしくない。

「早く大人になれ。--そんなには、待てない」

 これ以上くっついてると、大人げないことをしてしまいそうだ。
< 172 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop