必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 アルは柔らかな頬に口づけしたい衝動をなんとか抑えて、リーズの体を解放した。夜着をはおりながら、リーズに問う。

「変な奴じゃないのか?」

 そもそも、残虐公爵の城を好きこのんで訪ねてくる奴はいない。それだけで、立派に変な奴だ。

「品のいい紳士よ。とても大切な用件だって言うから、追い返せなくて」
「ふぅん」

 リーズの言う通り、応接間で待っていたのは見るからに金持ちそうな男だった。

 年はトマス爺と同じくらいだろうか。身につけている衣服も持ち物も、上質で値がはりそうだ。

「あいにく、当主は留守にしておりまして。どういったご用件でしょうか?」

 アルは外向きの笑顔を作って、彼に話しかけた。
 アルの声に、男がぱっと顔をあげた。風格のある、やはり上流階級の人間と思わせる顔つきだった。だが、その表情はやけにかたい。

 楽しい話ではなさそうだな。アルはそう思いながら、男の正面に腰をおろした。
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