必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「実は……こちらにナットという少年がいるとうかがいまして」

 子供達の話が出てくるとは、アルも想像していなかった。ナットがどこぞかで、なにかやらかしたのだろうか。彼も多感な年頃だ。色々あるのかも知れない。

「えぇ。おりますが、彼がなにか?」

 アルの返事を聞くやいなや、男は突然立ち上がり、アルにすがりついてきた。

 女性に抱きつかれることは多いが、爺さんに抱きつかれたのなんて初めてかもしれない。

「ナットを、ナットを返していただきたい!」

「えっと、それじゃ、つまり……そのお爺さんはナットの本物のお爺ちゃんだってことですか?」
「最初からそう言ってるじゃないか。理解が遅いな、烏ちゃんは」
「ごめんなさい。あんまり急な話だから……」

 エイミとジークは王都から帰宅するとひと息つく間もなく、待ち構えていたアルにつかまって話を聞かされた。

「本当に間違いないのか?」

 エイミの目には、ジークはずいぶんと冷静そうに見えた。ジークの問いにアルは頷く。
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