必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「わ、わかったよ。会うよ」
「本当か?」

 ジークの顔がぱっと輝いた。

「けど、どうするかは俺に決めさせてくれ。祖父さんに会って、自分で決めるから」
「あぁ、わかった」

 その夜。寝室に入ってきたジークは無言のまま、エイミの横に座った。

 エイミはくるりと向きを変えて、ジークを正面から見つめた。彼の頭にそっと手を伸ばし、優しく撫でた。

「よく頑張りましたね、ジーク様」
「うむ」

 ジークはそのまま、ぽすりとエイミに体重を預けた。エイミは彼の背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。

「でも、ナットがお祖父さんにほだされてあちらで暮らすと言ったらどうします? 遠いんですよね」

 スンナ地方はここからだと王都を挟んで、ちょうど真逆。かなりの距離があるとアルから聞いていた。

「……毎週一度は会いに行ったら、ダメだろうか?」
「うーん。ちょっと鬱陶しがられるかもしれないですけど……お供しますね!」
「エイミ。傷つけるようなことを言って済まなかったな」

 エイミは目を伏せ、ゆるゆると首を振った。

「いいんですよ。かたーい絆ができるまで、頑張りますから! ジーク様が手放せないってなるまで、諦めません」

 自分でも驚くほどに、たくましくなった。ジークの側にいるためなら、なんだってできるような気がするのだ。

 そんなエイミに、ジークはふっと微笑んだ。

「もうとっくに、手放せなくなってる」
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