必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 リーズが去った後の部屋は、やけに静かで寒々しく感じられた。

 アルは書類仕事の手を止めると、天井を仰いだ。ふーと細く息を吐く。

 彼女はよく晴れた日の太陽のようだとアルは思う。ギラギラとその存在を強く主張してきてちょっと鬱陶しいくらいなのだが、だからといってその姿が見えない日が続くとやはり寂しい。彼女のもたらす明るさと温もりが恋しくてたまらなくなる。

 リーズに初めて会った日のことは、まるで昨日のことのように鮮明に思い出せる。アルの足にすがりついて、泣きじゃくっていた幼い少女。小さく儚いこの生き物を、なんとかして助けてやりたいと強く思った。
 ジーク以外の人間にはとことん冷淡だったアルが、そんなふうに思うのは奇跡的なことだった。
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