必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 あの思いは今も変わってはいない。あらゆる災厄を遠ざけ、優しく美しい思い出だけで彼女の人生を彩ってやりたいと願っている。当然、近づく害虫はすべて振り払うつもりだった。

 アルは両手で顔を覆うと、ひとりごちた。

「まさか僕自身が害虫になるとはねぇ……人生なにがあるかわからないな」

 リーズを託すとすれば、その相手はジークのような男だけだと思っていた。彼のように強く、優しく、誠実な男でなければ、到底許せないと。どう考えても自分は害虫の側だろう。

 先程目にしたリーズのしなやかな身体が、目に焼き付いて離れない。

 子供だと思っていた。ほんの少し前までは、「子供だから」という言葉だけで自分を抑えることができた。
 だが……いつの間にかリーズは自分に追いつこうとしている。甘い香りを纏う、大人の女になろうとしていた。
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