必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 だが、ジークは意外な話をはじめた。

「黒が不吉な色だというのは、我が国特有の価値観だ。俺は若い頃は戦争で色々な国を遠征していたが、国民の大多数が黒髪という国もあったぞ。そこでは、エイミのような艷のある長い黒髪が美女の条件だった」
「そ、そんな夢みたいな国があるなんて! 世界は広いんですね~」

 エイミは目を丸くして、驚いた。黒髪だらけなんて、エイミにとっては楽園のようだ。

「そうだ、世界は広い。世界に出れば、お前の黒髪は気味悪くなんかないぞ」
「世界かぁ。いつかその国に行ってみたいです」
「うん、異国は面白いぞ。戦争がなくて平和なのは良いことだが、俺は世界のあちこちに行くのが好きだから、最近は少し物足りない」

 六年前、隣国との大きな戦が終結した。それ以降は小さないざこざはあるものの、平和な状態が続いている。
 ジークはエイミに異国での色々な思い出を語ってくれた。知識の乏しいエイミにもわかりやすいように話をしてくれるから、とても楽しくて時間を忘れてしまいそうだった。

 それに、エイミはジークの声も好きだ。穏やかで優しい低音はいつまでも聞いていたくなるほど、心地よい。
< 38 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop