必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「あぁっ」

 エイミはあわてて手を伸ばしたが、一歩遅かった。
 ガチャンと鍋が倒れる音をかき消すような、シェリンの悲鳴が響いた。

「どうした?」

 悲鳴を聞きつけたジークとアルが、ダイニングルームに駆け込んでくる。

 エイミは彼らの問いかけには答えず、熱々のスープを足にかぶってしまったシェリンを抱き上げ厨房へと走り去る。
 流し台にシェリンを座らせ、冷たい水をザーザーとかけ続けた。それでもシェリンの泣き声はやまず、足は真っ赤に腫れ上がっていた。

「火傷か! すぐに医者を呼ぶから、それまでシェリンを頼む」

 状況を把握したジークがエイミの背中に声をかけた。
 エイミは泣きながら頷いた。

「すぐに。一秒でも早く来てもらってくださいっ」

 エイミの要望通り、すぐに医者が駆けつけ、シェリンを連れていった。
 
 エイミはその場から動けず、呆然と立ち尽くしていた。

(なんてことを……私が目を離したばっかりに。そもそも、鍋をテーブルに置くなんて、うかつとしか言いようがないわ)

 後悔ばかりが頭をよぎる。

 どのくらい、そこにいただろうか。
 
 ふと気がつくと、ジークが戻ってきていた。
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