必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 部屋の中を見渡したジークは、すでに足を踏み入れたことを後悔しはじめていた。

 そこには、おびただしい数のドレス、白やら、赤やら、青やら……ジークには色の違い以外はさっぱりわからないが、とにかく、ものすごい数のドレスが並んでいた。

「これはいったい……」
「アルと私で、評判の良い仕立屋に片っぱしから声をかけて、持ってこさせたのよ」

  リーズは誇らしげに鼻をふくらませた。続いて、キャロルが説明してくれる。

「結婚式のドレスを選んでいるところなんです。伝統的なのは白いドレスだけど、いまの流行はブルーなんですって。なんでも王妃様が結婚式で青いドレスをお召しになられたとかで」

  王妃のドレスどころか、顔すらよく覚えていないジークは、返答に困ってしまう。

「うん、たしかにブルーも素敵! でも、エイミの黒髪にはあまり合わないような……いっそ、真紅はどう?」
「あぁ、いいわね! 大人っぽくて素敵だと思う。リーズちゃん、センスある! ほら、どうかしら? エイミちゃん、着てみない?」

 キャロルは赤いドレスを数着みつくろうと、エイミの前で広げてみせた。

「いや、あの……」

 楽しげなリーズとキャロルとは対照的に、エイミは浮かない顔だ。

「こんな豪華なドレス、絶対似合わないというか……触るのも畏れ多くてですね」
「もう! さっきからそんなことばっかり言って、全然決まらないじゃないの! ドレスを決めなきゃ、靴もアクセサリーも髪飾りも決められないのに」
「ひ、ひい~」

 リーズにまくしたてられて、エイミは目を回している。
< 61 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop