必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
  エイミは泣きたくなってきた。けれど、ここで泣いてはますますジークに呆れられてしまう。エイミは必死に涙をこらえると、目についた適当なドレスをつかんだ。

「あの、これ、このドレスにします! もう決まったので、大丈夫です。ジーク様はどうぞ、お仕事に戻ってください」
「エイミ……それは多分、下着だと思うぞ」

 エイミがつかんだのは、女性の腰を締め上げるためのコルセットと呼ばれる下着だった。亡き母親が苦しい苦しいとよく文句を言っていたことをジークは覚えていた。

「え? 下着? こんなにキレイな布が使われているのに?」

  エイミはまじまじとコルセットを見つめ、首をかしげた。高級なシルク地に贅沢なレースがふんだんに重ねられている。コルセットの存在など知らないエイミには、豪華なドレスとしか思えなかった。

  ジークはふっと微笑むと、エイミの手を取った。

「少し座って話をしないか? 俺の仕事のことは気にしなくていいから」
「は、はい」

ジークに触れられている右の手が、急に熱くなった気がする。自身の心臓がやけに早く打ちつけているのはなぜだろうかと、エイミは不思議に思った。
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