必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「あの、領主様とお子様方には明日ご挨拶をさせてもらえるのでしょうか」
「子供達には、そのうち紹介する。ジーク様は……お前には会いたくないそうだ。くれぐれも、勝手に部屋をたずねたりするなよ」
「は、はい! かしこまりました」
「はい、君の部屋はここ。じゃあね。おやすみ、烏ちゃん」

 アルは片手をあげて、ウインクをしてみせる。キザな仕草だが、彼にはとてもよく似合っていた。

 与えられた部屋は広々としていて、とても清潔だった。むしろ広すぎて、落ち着かないくらいだ。皺ひとつない真新しいシーツの敷かれたベッドに、エイミは潜り込む。

 (会いたくない……か。ご挨拶くらいはしたかったけど、公爵様だもんね。私みたいな田舎者とは顔を合わせたくないのかも)

 雇い主に、会う前から嫌われてしまったのは悲しいような気もするが、会ってこの黒髪を見られたらもっと嫌われるだろう。会わなくて済むなら、互いのためにそれが一番いいのかもしれない。

 考えたいことは色々あったはずなのに、思っていた以上に身体は疲れ切っていた。いつの間にか、エイミは眠りに落ちていた。

 夜中に何度か赤子の泣き声が聞こえたような気もしたのだが……この家にはまだ小さい子供がいるのだろうか。それとも、ミアやアイリーンが小さかった頃の夢でも見ているのだろうか。
< 8 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop