必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
「出せばいいじゃないですか。ていうか、この場合出すのが礼儀ですよ」
「いや、もちろん普通の結婚ならそうだろうが……俺はエイミに子供達の母親になってくれと頼んだだけだ」

 アルは「はぁ~」と、これみよがしなため息をジークに聞かせた。

「あのですね、きっかけはそうかも知れないですけど、烏ちゃんだって子供じゃないんだ。ていうか花嫁としては年増の部類じゃないすか。妻になることの意味くらい、理解してるでしょうよ」

 むしろさっきの落ち込みぶりは、理解しているからこそだろう。アルはほんの少し、エイミに同情した。

「けど、エイミはひどく怯えていた。嫌がるようなことはしたくない」

 アルはちっと舌打ちしそうになったが、かろうじて我慢した。

「いやいや、女性のそういう素振りはそれもまたマナーというか、様式美みたいなもんでして……」
「怯えるのがマナー?」

 ジークは心底不思議そうな目で、アルを見る。
 アルは心の中では『面倒見きれん』とぼやきつつも、結局ジークに事細かに説明してやった。

「つまり、可愛らしく見せようという計算。この言い方が世の女性に失礼ならば、男性へのサービス心と言い替えましょうか。なんだかんだ、女性は初心なほうが喜ぶ男は多いですからね」
「ほぅ……そういうものか」
「ま、烏ちゃんレベルでこういう駆け引きができるとは思えないですけどね」

 アルはうっかり口を滑らせた。ジークは途端に落ち込んでしまう。
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