恋愛回数券


でも…俺の体は動かないまま。金縛りみたく見つめる事しか出来なかった。

無情にも、雨は止むことを知らず、アイツを打つ。その傷付いた背中を。




一体…どれくらい傷を増やしたか。
一体…どれくらい涙を流させたか。

俺は只見つめた。


煙草の火が消える。
硝子にもたれ、人混みに混ざるアイツを見つめる。

声にならないけど、そっと呟いた。



背を向けた二人にどしゃ降りの雨音が響く。

もぅ、戻る事はない。もぅ、アイツは戻らない。



今、アイツの背中は人混みに消えた。足跡さえ、雨に流されるだろう。
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