恋愛回数券


『宿題を期限内に提出する事が大切なんだ』と、口を酸っぱくして言う、達美なんかは正反対の俺としては理解に苦しんだ。
いつもお気に入りの…『ピタゴラスの方式』が愛読書だ。

シャツのボタンを天辺までとめて、ネクタイの結び目が鶉卵並にちっちゃくなるまで締める。
呼吸さえ怪しくなるその格好は、見てるだけで俺に取っては暑苦しい。

おまけに、童貞ときた。

まあ、誰もが納得と言った所か。

しかし、達美は七三にした前髪を人指し指と親指で挟む様に整えながら自信満々に言う。

『セックスは宝だ。今の若者は挨拶変わりにしか見ていないんだ。古代セックスは神聖な奥義だったんだ。なりふり構わずするのは発情期の動物ぐらいだ。低レベル化した人類は今やそれ以下だけど…』


そぅ言って現実から目を背け続ける。
『若者は』と言うが、お前自身ゎ既に腐った生ゴミみたいな考えしかもっていないくせに。

自分を磨くなんて…きっと達美の脳味噌にはインプットされていないんだ。

ただあるのは、次のレポートの提出期限と、期末テストの範囲だけ。
ピタゴラスの方式なんかより、恋愛の方式を知れと言ってやりたい。
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