ぜんぶ、嫌いだけど
「ごめん、もう帰るね〜」
私の方に駆け寄ってきた夏那は当然のように腕を組んでくる。
周りの女子が一斉にこちらを向いて、さも私のことも友達かのように「ちーちゃんバイバーイ」と声をかけられる。
とりあえず頭を軽く下げてから、下駄箱へと歩き出した。
「だから暑い」
「えー、いいでしょ〜?」
ああ、ほらまた上目遣い。
そうすれば言うことをきくと思ってる。
「よくない」
腕を振り解いて歩いていくと、小走りで私のことを追ってくる。
どうせ同じ場所に向かうのだから、歩幅を合わせるのが面倒だった。
上履きをローファーに履き替えると、昇降口のところで既に夏那が待っていた。
彼女のすぐ後ろには青空が広がっていて、日陰とのコントラストに目が眩みそうになる。
「行こ?」
外は蒸し暑くて、アスファルトから立ち上る熱気は肌がベタつくように感じて心地悪い。
そして隣には、ひとりで楽しげに話している夏那。
ガードレールの内側を歩く彼女から離れるように、私は車道を歩く。
「ねえ、ちーちゃん」
首筋に汗が垂れる。暑くて、なにもかもが嫌になりそうだ。