新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「あぁ、本当に。どうするんだよ、もう来ていたら」

 刺々しく言うと、新川部長は自分の目の前で足を止めた彼女の頭を突いた。

 くだけたやり取りに、ふたりの仲睦まじい様子が覗える。それもそのはず。彼女こそ新川部長の婚約者、金子(かねこ)彩香(あやか)なのだから。そして私の指導係でもある。

 私より三つ年上の二十八歳になる金子さんの第一印象は、綺麗で優しそうな人だった。

 現に午後から大まかな業務内容を教わっている最中に垣間見られた彼女の素顔は、第一印象そのままだった。
 おまけに仕事がデキて、アラカワ製菓の傘下会社の社長令嬢。

 そんな彼女が新川部長の婚約者だと知ったのは、仕事中、金子さんが新川部長に呼ばれ、席を立ったときだった。

 その隙に、同じ営業部の先輩社員ふたりに話しかけられた。最初は『男性が多い営業部に配属された、数少ない女性社員同士としてよろしくね』と言われ、そこから話は私の指導係である金子さんのこととなり。

 その流れで彼女が社長令嬢であり、新川部長の婚約者だと聞かされたのだ。

 それもふたりの仲は公認となっており、社内で知らない人はいないとも。
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