新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 しかし川端にも心配をかけていたなら、大丈夫だと伝えてあげたい。

 努めて平静を保ち、彼女に声をかけた。

「川端、ちょっといいか?」

「えっ? あ、はい!」

 驚いて立ち上がった川端を連れて、向かった先は会議室。先に彼女を室内に入れ、鍵をかけて振り返れば、いつになく緊張した面持ちで俺を見つめていた。

「あ、あの……。なにかあったんですか?」

 心配して恐る恐る聞いてきた川端には悪いが、その怯えた姿が可愛い。
 からかいたい気持ちを抑えて、首を横に振った。

「いや、なにもないよ。ただ川端にも実家に行ったときのことを早く伝えようと思って呼び出したんだ」

「そうだったんですか」

 あからさまにホッとした顔を見せると、川端は「それでどうでしたか?」とすかさず聞いてきた。

「予想通りの反応だったよ。激怒して婚約破棄は許さんって言われてきた」

「……えぇっ!? ぜ、全然なにもなくないじゃないですか!!」

 コロコロと表情を変え、慌て出す。

「やはり反対されたんですね。言ってましたもんね、一筋縄じゃいかないって。それでどうするんですか? 大丈夫なんですよね?」

 本気で心配する川端には悪いが、必死になる様子が可愛くてたまらない。それに、ふたりのことをまるで自分のことのように心配できるのは、川端の人柄だ。優しい子だと思う。
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