新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 だから俺もなにかと気になってしまうのかもしれない。

 そんなことを考えていると、なにも言わない俺に痺れを切らしたのか距離を縮めてきた。
 彼女の顔が近づいてきて、思わず息を呑む。

 なにをこんなにも動揺しているんだ? 俺らしくない。

 しかしこっちの事情を知る由もない川端は、答えを急かす。

「どうなんですか?」

「……っ! 大丈夫、根気強く説得するつもりだから心配するな。話は以上だ」

 一方的に言って俺は足早に会議室を後にした。

「なにやっているんだ」

 深いため息を漏らしてオフィスへと戻る。

 今までだって彼女と距離が近づくことは度々あった。それどころか俺、川端の頭を撫でて、触れてもいたよな? それなのに近づいてきただけで動揺するとは……。

「彩香のせいだな」

 さっきあいつに変なことを言われたからだ。

 そう自分に言い聞かせ、業務にあたった。


 その後はとくに川端を意識することはなく、二週間が過ぎた。何度か父さんに会いに行ったが、門前払い。彩香の両親も連絡を取ろうにも、取り合ってくれないそうだ。

 それでも陸と彩香はめげることなく、ふたりで乗り越えようとしている。
< 102 / 277 >

この作品をシェア

pagetop