新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 店舗に伺えば、力仕事である品出しをよくやらされ、その間に『この棚割りでは売れない』などと、叱咤されてきた。

 だが、それは入社して一年が過ぎた頃の話だ。まだ入って三ヵ月で、なにより今日が店舗回りをするのが初めての川端だったらどうだ?
 右も左もわからないのに、あの人にきつく当たられ、しごかれたら……?

 考えれば考えるほど川端のことが心配でたまらなくなる。

 大通りに出てタクシーを拾い、吉祥寺店へと向かった。



「おや、珍しい人が来た。久しぶりですね、新川部長」

「……お久しぶりです」

 裏口から入って事務所へ向かうと、パソコンを開いて小川さんが仕事をしているところだった。

 事務所に川端の姿はない。やはり売り場で品出しを任されているのだろうか。

「どうしたんですか? 私になにかご用でも? そうでしたら、わざわざお越しいただかずに電話でもよろしいでしょうに」

 小川さんは、立ち上ってこちらに歩み寄ってくる。

「うちの新入社員がひとりでこちらにご挨拶にうかがっていると聞きまして。失礼がなかったか心配で参りました」

 はやる気持ちを抑えて言えば、小川さんは珍しいものを見るように目を見開いた。
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