新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「意外ですね、新川部長が特定の部下を気にかけるなんて。もしかして彼女は新川部長のコレですか?」

 そう言って小川さんは小指を立てたものだから、「そんなわけありません」と、いつになく大きな声を上げてしまった。

「……すみません」

 すぐに謝るものの、自分の言動に戸惑う。

 取引先を相手に、俺はなにをムキになっているんだ? 小川さんはただの冗談で言ったに過ぎないだろ。
 それなのに真に受けて強く言い返すなど、どうかしている。こんなの、いつもの俺じゃない。

 激しく動揺していると、小川さんは含み笑いした。

「大丈夫ですよ、彼女。びっくりするほどタフでやる気がある子ですから。しかし、少し鈍い子ですか? 今もわざとメーカーの営業が嫌がる品出しをお願いしたら、喜んでやってくれていますよ」

「えっ?」

 喜んでやっている? いや、それよりも小川さん、さっき聞き捨てならないことを言っていなかったか? わざと俺たちが嫌がる品出しをお願いしたと。

「閉店前でお客様も少ないですし、どうぞ店内へ」

 小川さんとともに売り場に出ると、菓子コーナーでジャケットを脱ぎ、商品を丁寧に棚に並べる川端の姿があった。
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