新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
そんな彼女と残りの品出しを終えると、小川さんが俺たちに珈琲をご馳走してくれた。

 ふたりのやり取りを見ていると、長年付き合いがあるような親密っぷり。ここまで小川さんの機嫌が良いのも滅多にない。

 最後はにこやかに「今後もよろしくお願いします」と見送られ、店を後にした。



「川端はいったいどんな魔法を使ったんだ?」

「えっ!? ま、魔法ですか!?」

 帰りのタクシーの車内で気になって聞くと、川端は首を捻った。

「どういう意味ですか? 魔法って」

 どうやら自分がすごいことをしたと、理解していない様子。彩香のことだ、変にプレッシャーを与えぬよう、小川さんの人ととりは伝えずにいたのだろう。

 つまり小川さんは、ありのままの川端を気に入ったということだ。

 大勢のメーカーの営業がこれまで、必死になって小川さんに気に入られようとしてきたというのに。

 思わず笑ってしまうと、ますます川端は不思議そうにする。

「なんですか? いったい。……まさか私、小川さんになにか失礼をしてしまいましたか? 連絡がいって、それで新川部長がわざわざ来たんですか?」

 オロオロする彼女に、首を左右に振った。
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