新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 幼い頃からの許婚。仕事場では上司と部下の関係を貫き、ふたりっきりのときはあぁやって恋人同士のように振る舞っているんだ。

 もう完全にノックダウンさせられた。立ち上がれるわけがない。
 大きなため息を漏らしたところで、現実に戻る。

 そんなふたりが、どうして私がこれから生活するシェアハウスの前で待ち合わせなどしているのだろうかと。

「あいつに文句を言われたら、彩香が遅れたせいだって言うからな」

「どうぞご自由に」

 そう言い合ってふたりは、シェアハウスに入っていった。

「え、嘘でしょ!?」

 思わず声を上げてしまう。

 本当にどういうこと!? ま、まさかふたりがシェアハウスの住人ってことはないよね? だって御曹司と社長令嬢だ。うん、絶対にあり得ないはず!

 だけどそれじゃどうしてふたりは、家の中に入っていったの?

 堂々巡りしていると、ドアが開く音が聞こえてきた。

 顔を上げてその方向を見ると、怖い顔をして新川部長がこちらに向かってきている。

「あっ……!」

 頭が混乱して、隠れることなくウロウロしていたことに今さらながら気づく。
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