新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 それとしばらくはふたりの婚約破棄は公表せず、頃合いを見てするとか。

 それらを告げられたとき、なんて言葉をかけたらいいのかわからなかった。

 正直に言えば寂しいし、悪いことをしたわけではないのに金子さんが辞めなくてはいけないことに、やり切れない思いでいっぱいになった。

 だけど金子さんは笑顔で、『こうなった以上、退職は仕方がない』と言い、今後は大家さんとの時間をたくさん取れるから楽しみだと前向きに捉えていた。

 大家さんも金子さんのことを幸せにするため、よりいっそう仕事にまい進すると言っていた。

 大家さんの仕事は場所を選ばずにできる。だから金子さんが退職後は、都内から離れるつもりらしい。

 ふたりでのんびりと田舎で暮らすことが夢だったようで、その夢を実現させるための資金として、このシェアハウスも売ると告げられた。

 私の入居先は、大家さんが責任を持って探してくれると言っていた。見つかるまでこの家は売らないとも。
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