新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 その反面、これからの生活の話をするふたりは幸せそうで、大家さんと金子さんの気持ちを考えれば、受け入れるべきだとも思う。

 それに二度と会えなくなるわけではない。いつか広い庭付きの新築一戸建てを購入するから、そのときは私とジョージさんを招待し、バーベキューでもしようなんて気の早い話をされたくらいだ。

 きっと会おうと思えばいつでも会える。ふたりの決断を祝うべき。

 それなのにこんなにも思い悩むのは、好きな人が苦しんでいるからだ。

 ジョージさんにとって大切な存在である大家さんと金子さんには、幸せになってほしい。
 そんなふたりをジョージさんも笑顔で祝い、送り出してほしい。

 そのために私にできることってなんだろう。なにもしないべきなのかな。

 いくら考えてもその答えは出ず、日々仕事に追われながら一日、また一日と過ぎていった。



 それから一ヶ月半後――。

「それでは金子さん、お疲れ様でした! 結婚後も気にせず遊びにきてくださいねー!」

「おめでとうございますー!!」

「カンパーイ!」

 幹事の乾杯の音頭を皮切りに、貸し切りの店内は騒がしくなる。
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