新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
大勢の同僚に囲まれている金子さんは、「おめでとう」とお祝いの言葉をかけられていた。

 ジョージさんの努力虚しく、金子さんは今日で退職することとなった。今夜は彼女の送別会。営業部全員が出席している。……もちろんジョージさんも。

 金子さんにとっては愛する人との幸せな生活がはじまるわけで、新たな門出を祝うべきだと思うけれど、私は素直にできずにいた。それというのも……。

「大丈夫か? 川端さん。……つらいなら無理して来ることなかったのに」

 井手君は隣に腰をおろして、コソッと心配そうに耳打ちしてきた。

「いや、来るしかないか。金子さんは川端さんの教育係だったもんな」

「……うん」

 返事をすると、井手君は「今日は俺と飲もう!」と気遣う。

 井手君は私がジョージさんに片想いしていることを知っている。だからこんなにも心配してくれているんだ。

 金子さんの退職理由は、ジョージさんと結婚して家庭に入るためとなっている。

 ジョージさんと金子さんが婚約破棄したことは、社内に公表されていなかった。
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