新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 ど、どうしよう。今の状況、どう見ても新川部長の後をつけてきたと思われても仕方がないよね? 思いっきり不審者感丸出ししていたし。

 サッと血の気が引く。そんな私の目の前で足を止めると、新川部長は疑いめいた目を向けた。

「どうして川端がここにいるんだ? ……俺をつけてきたのか?」

 あぁ、やはりそう思われたようだ。どうやって誤解をとけばいいだろうか。
 そ、それよりもまずはここが私の家だからだと、伝えるべきでは? 決して新川部長をつけてきたわけではないと!

 しかし威圧感を与えられ、うまく言葉として出てこない。これでは誤解を確信に変えるだけ。

 すると新川部長は大きなため息を漏らした。

「毎年あるんだ。俺にひとめ惚れしたとか言って、後をつけられることが。まさか川端もだとは……。有能な部下ができたと思っていたのに、がっかりだよ」

 軽蔑した目を向けられ、ズキッと胸が痛む。

 初めて好きだと思えた人に「がっかりだよ」と言われ、泣きそう。

 でも泣いている場合じゃない。部下としての信頼を失ったままになってしまう。

「今回は見逃がしてやるから、今後はこういう真似は絶対にするな。それと、俺と彩香のことも他言しないように」

 一方的に言い、踵を返した彼の腕を咄嗟に掴んだ。

「待ってください!」

 だって私、まだ誤解をといていないもの。
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