新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「でもふたりを守れなかったことに変わりない」

 いまだにマイナス思考の彼がもどかしい。

「守れてますよ! 今も昔もずっと。だから大家さんと金子さんは幸せになれたんです。ジョージさんがいたからです。……お願いですから、自分を責めないでください」

 悲しまないでほしい。苦しまないでほしい。大家さんと金子さんの気持ちを理解してほしい。

「大家さんも金子さんも、ジョージさんの幸せを願っています。それなのに、いつまでもジョージさんは自分を責めて落ち込んでいたら、ふたりはどう思いますか? ふたりのためにも、笑ってください!」

 彼の両頬に触れ、無理やり笑顔を作る。

「か、川端……?」

 突然の行為にジョージさんは困惑気味。我に返り、慌てて手を離した。

「す、すみません! ジョージさんに笑ってほしい一心でつい……!」

 な、なにをやっているのよ、私……! 恥ずかしすぎる。ジョージさんがなにも言わないから余計に。

 なんとも言えぬ空気に耐え切れなくなりそうなとき、ジョージさんは「ハハッ」と笑ってベッドに倒れ込んだ。

「ジョージさん……?」

 目を腕で覆っていて、表情を見ることができない。でも口元は緩んでいた。

「そうだな、あと俺にできるのは、笑顔でいることかもしれないな。……こうなってしまった以上、ふたりを笑顔で送り出したい」

「ジョージさん……」
< 133 / 277 >

この作品をシェア

pagetop