新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「それと昨日はごめんな、川端さんにも迷惑をかけたみたいで……。今朝、先輩からのメッセージを見て知ったよ。自分の失態を」

 井手君は相当落ち込んでいる様子。

「大学の飲み会でも、あんなに酔ったことはないんだけどな。とにかく今後は気をつけるわ」

「うん、ぜひそうしてください」

 飲み会のたびに隣で酔い潰れられたら大変だ。

 井手君は素直に「はい」と返事をするものだから、思わず笑ってしまう。するとそんな私を見て井手君は頬を緩めた。

「よかった、川端さんが元気そうで」

「えっ? あっ……」

 そうだった。井手君は私が完全に失恋したと思い込み、だから心配して昨夜は励まそうとしてくれたんだよね。

「うん、心配かけてごめん。大丈夫だから」

 とは言うものの……。違う問題を抱え込んでパニックになっていますが。

 さすがにジョージさんたちの事情は言えない。井手君には、私が失恋したことにしておこう。

 玄関口を抜けてエレベーターの列の最後尾に並ぶ。
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