新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 本当は今すぐに断りたい。でもどう言って断ればいいの? 井手君には私は失恋したことになっているんだもの。

「答えはもちろん今すぐじゃなくていい。長期戦覚悟だから、ちゃんと俺のことを見て知って、考えてほしい」

 そんなことを言われたら、ますます断れなくなるじゃない。
 井手君を見るとにこにこ笑って私の答えを待っている。

「えっと……はい」

 表向きはこう返事するしかないよね。

「ありがとう。俺、川端さんに好きになってもらえるよう、頑張るから」

 眩しい笑顔で言う井手君に、胸が痛む。

 やっぱり今すぐに断るべきじゃないかな。だって私が好きなのはジョージさんだ。この気持ちは変わることない。

 でもそうなると、なんて言って断ったらいいのか……。

 ちょうどピザが運ばれてきて、その後も切り出すタイミングが掴めず。井手君に奢ってもらって店を後にした。

 会社に着いたのは、昼休みが終わる五分前だった。エレベーターの中で、井手君は上機嫌で言う。

「うまかったな、あの店」

「うん、そうだね」

「また今度ふたりで行こう。……他にもうまい店、探しておくから」

「……都合が合えば」

 井手君の笑顔につられるが、曖昧な返事で誤魔化した。
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