新婚未満のかりそめ初夜～クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする～

『複雑なトライアングル!?』

時計の秒針の音が異様に耳に届く静かな空間で、スンと鼻をならせば、珈琲の芳しい香りが漂ってきた。

「はい、どうぞ」

　にっこり笑顔で私のテーブルの前にカップを置いたのは、金子さんだ。

「……ありがとうございます」

　ワンテンポ遅れてお礼を言うも、その顔は間違いなく引きつっていると思う。

　シェアハウスの共有スペースである、リビングのソファに座っている私。隣にはなぜか新川部長。そしてテーブルを挟んで大家さんと金子さんが並んで座り、笑顔を向けている。

　えっと、あれ？　なにがどうなってこうなった？

　新川部長と大家さんが言い合いをしているところに、金子さんが仲裁に入って、それであれよあれよという間に家に連れ込まれて……。

　それにしてもこの並び、間違っていませんか？　どうして婚約者同士のふたりが一緒に座らないの？

　いや、それよりも事の真相を聞きたい！　やはり新川部長と金子さんもここに住んでいるの？

　次から次へと疑問が湧く中、大家さんは金子さんが淹れた珈琲を飲み、笑顔で話し出した。

「改めまして、大家の三谷陸です。これからよろしくね、涼ちゃん」