新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 だってしっかりと返事をしてしまったら、今後も井手君とふたりで度々ランチに行くことになり、その度にさっきの話をされたらどう断ればいいか……。

 だけど本当、どうしよう。

 エレベーターから降りてオフィスに入ると、私と井手君を見た先輩たちが慌てた様子で駆け寄ってきた。

「あ! やっと戻ってきた!!」

「みんな! 噂のふたりが来たぞ」

 状況が掴めない私たちは、いったいなにがなにやら。

「えっ? いったいなんですか?」

 困惑しながら井手君が聞くと、私たちを取り囲んでいた先輩たちは、急にニヤニヤし出した。

「なんですかじゃないわよ。見たわよ~! ふたりが手を繋いで会社を出ていくところを。なになに? ふたりってば、いつの間に付き合っていたの?」

「それならそうと早く言ってくれたらよかったのに」

「いや~新川部長と金子さんの結婚といい、営業部はおめでたいこと続きだな」

 私と井手君そっちのけで進む話にギョッとなる。
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