新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 川端に惹かれはじめてから、何度同じことを思っただろうか。

 好きだと自覚しているくせに、井手のように想いを伝えることに躊躇する。

 どうしてこうも臆病になる? 好きなら好きだと伝えればいいだけのこと。そんな当たり前のことができなくなっていた。

 だけどそうも言っていられない。うかうかしていたら、井手に奪われる。

 今夜にでも川端に告白しよう。そう心に決めて仕事に取りかかった。



 定時を三十分過ぎたところで仕事を終え、足早に会社を後にして家路を急ぐ。

 川端は定時と同時に上がった。もう家にいるだろう。

 はやる気持ちを抑えて車を走らせて家に着くと、明かりが灯っていた。玄関にくると家の中からは笑い声が聞こえてくる。

 会社を出る前に陸から連絡が入った。【涼ちゃんは俺と彩香が引きとめておくから、早く帰ってこい】と。そして【子犬系爽やかイケメンに遅れをとるな。告白しろ、絶対に】とも送られてきた。

 言われなくてもそのつもりだ。

 玄関前で一度深呼吸をしてからドアを開けると、リビングのほうから彩香の焦った声が聞こえてきた。
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