新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 だから好きでいるだけならいい? だってこの感情を止める術が見つからないもの。
 恋に恋していただけとはいえ、初めて好きになった人。今はただ好きって気持ちを大切にしたい。

 上司としてかけてくれた言葉でも、こんなに嬉しくて幸せな気持ちになれるのだから。

「なにかあったらいつでも声をかけるように」

 ジョージさんは私の肩をポンと叩いた。

「お疲れ」

「お疲れ様です」

 ワンテンポ遅れて挨拶を返すと、ジョージさんは会議室から出ていった。

 パタンとドアが閉まると、そっと胸元を押さえた。
 心臓の動きが速くて、落ち着かせるように大きく深呼吸をした。

 無理に気持ちを消すことはない。誰にもバレなければ迷惑をかけることも、誰かを傷つけることもないのだから。

 そう思うと気持ちが軽くなる。
 私も荷物をまとめて電気を消し、会議室を出る。

 営業部のオフィスに戻ると、金子さんの姿はなかった。代わりに机の上にメモが残されていた。

 綺麗な字で外回りしてそのまま直帰するから、私も研修が終わり次第退社するようにと。そして『お疲れ様でした』の労いの言葉も綴られていた。

 金子さんの指示通り、残っている先輩たちに挨拶をしてオフィスを後にした。
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