新婚未満のかりそめ初夜～クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする～

　しかし付き合って五年と言っていたよね？　五年前ということは大家さんはすでに社会人のはず。長い年月を重ねてもいまだに安定しないなんて、いったいどんな仕事をしているのだろうか。

　ここまで話を聞いたら、全部聞いてしまおうと思い尋ねた。

「あの、大家さんのお仕事とはいったい……？」

　するとふたりは一度顔を見合わせた後、大家さんは言いにくそうに切り出した。

「えっと、実は物書きなんだ」

　物書き？　ということは、小説家とか脚本家とか？　もしかして漫画家？

　ありとあらゆる物書きという名の職業を浮かべていると、金子さんが期待した目で言った。

「若い女性に人気があるから、涼ちゃん知っているかな？　叶未来っていう小説家」

「叶未来って……」

　デビュー当時からの大ファンで、昨夜も読み返していたあの大好きな恋愛小説を書いている叶未来先生？

「恋愛小説一本でやっているんだけど、なかなかヒット作を生み出せなくてね。どうにか細々と出してもらえている感じなんだ」

　頭を掻いて複雑な表情になる大家さんに、たまらず声を上げた。